平成23年度研究 (学校数 44 会員数 技術科11名 家庭科18名)
1. 長生支部研究主題
生活に必要な基礎的な知識と技術の習得を図る指導法の研究 −基礎・基本を習得できる教材・教具の開発と活用法の研究を通して− |
2. 主題設定の理由
本支部はここ数年教材開発に力を入れている。技術分野では、主に「ものづくり」と「生物育成」の領域において木材・金属・栽培等多岐にわたって開発されている。現在は生物領域も必修題材となり、対応を急いでいるところである。家庭分野においても地域の食材を生かした学習など新しい題材が必要となっており、多様な学習から生活に必要な基礎・基本を習得すべきと考え、そのような学習の場を設定する必要がある。様々な領域に目を向け、教材・教具の開発することはこどもたちが生活を見直す機会を与えることに繋がると考え、本主題を設定した。
3. 研究の概要
(1) 研究計画
4月19日 |
技術・家庭科研修会 |
活動計画の立案 |
5月10日 |
長生教育研究会 |
役員決定・行事企画 |
8月 1日 |
教材開発研修会 |
教育研究集会の提案内容の詳細検討 |
8月4,5日 |
中学校技・家実技研修会 |
実技研修会 |
9月21日 |
長生教育研究会 |
技術・家庭分野からのレポート発表 |
12月 6日 |
技術・家庭科研修会 |
作品展の計画 |
1月12日 〜2月14日 |
技術・家庭科作品展 茂原市美術館 |
作品展 |
2月21日 |
技術・家庭科研修会 |
年間の反省と次年度の計画 |
(2) 長生教育研究集会 (9月21日 茂原市立西小学校にて)
今回は中学校技術科教育と小学校家庭科教育からのレポート発表が行われ、研究主題に沿った内容で発表された。概要は次の通りである。
○
中学校技術教育
提案者 長生村立長生中学校 三ツ本 勝教諭
1 研究テーマ 栽培への興味・関心を高める指導方法の工夫
2 設定の理由
作物は、私たちが生きていく上で必要不可欠なものである。野菜と言えば、季節野菜と言 われるように季節にあった野菜を収穫するのが常であった。しかし、科学技術の進歩により、いつでも簡単にスーパーなどで購入することができ、作物は作られているという感覚よりも売られているという感覚が大きい。また、本校は、千葉県唯一の村であり、学校付近には、田畑が広がり、農地率が非常に高い。しかしながら、村の農家率は13.6%とかなり少なく、農業従事者の割合も65歳以上が、74%となっている。このように身近に作物が育てられているにも関わらず、関わる機会もなく、それに興味も抱くこともなく過ごしている。
このような現状において、作物を育てることに興味・関心を持たせ、高めることが最優先に必要なことではないかと考えた。そこで、リーフレタスの水耕栽培を中心に生物育成を行いながら、土壌栽培を平行して行い、実際に体験し、それぞれの良い点を比較し、栽培方法の違いを見つけることで、生徒の興味・関心を高めていけるのではないかと考えた。さらに、授業での学習だけではなく、農業に関わっている高齢者の方や家庭、地域の人達から話を聞くなどの様々な知識を得られるようにすることで興味・関心が高まるようになると考え、本主題を設定した。この研究を通して、体験活動の充実を図り、未来につながる生きる力を育んでいきたい。
3 研究仮説
@ 生徒が普段食べている身近な作物を育て、その栽培方法を身につけることで、栽培を身近に感じることができ、興味・関心が高まるであろう。
A 生徒自らが、家庭や地域の人達から栽培の良さや栽培方法等を聞くことで、より意欲的に栽培に向き合えるであろう。
B 水耕栽培と土壌栽培の栽培方法を体験し、比較をして、まとめることで、生物育成への興味・関心が高まるであろう。
4 研究内容
(1)生徒の実態
(2)指導計画
(3)授業実践(水耕栽培と土壌栽培の学習を通して)
(4)事後調査及び生徒の変容
(5)考察
6 成果
○ 水耕栽培でリーフレタスを育て、土壌栽培では、自分たちが育てたい作物を育てたことで身近な存在だと感じ、収穫の期待から栽培への興味が高まった。
○ 初めて行う水耕栽培については、その栽培方法を具体的に知り、それを家庭でも生かしていきたいという意見が数多くあった。
「生徒が普段食べている身近な作物を育て、その栽培方法を身につけることで、栽培を身近に感じることができ、興味・関心が高まった。」
○ 主に土壌栽培では、その栽培方法は、インターネットなどを使用して調べさせたが、その他にも、自分の家で畑を行っている所は家の人から畑の作り方や肥料のやり方、マルチシートの活用などを聞き、それを基にしてとりくんでいた。
○ 通りに面した場所に畑があるので、作業をしているときなどにその様子を見た近所の方々から鍬の持ち方や使い方、季節にあった野菜などを教えてもらっていた。その際にも、進んで教えを請う姿が見られた。
「生徒自らが、家庭や地域の人達から栽培の良さや栽培方法等を聞くことで、より意欲的に栽培に向き合えることができた。」
○ 生徒の感想にもあるように、同時に違った栽培方法を体験し比較することで、それぞれの良い点を見つけ出し、意欲化につながった。
○ 水耕栽培でリーフレタスの早い成長を観察することで、興味を保ち続けることができ、土壌栽培で単調になりがちな水耕栽培から目線を変えることで関心を高めることが出来たと考える。
「水耕栽培と土壌栽培の栽培方法を体験し、比較をして、まとめることで、生物育成への興味・関心が高まった。」
7 課題
・ 今回は、試験的に土壌栽培も取り入れて行ってみたが、畑として活用した場所が小さかったために、生徒が望む作物をすべて育成することができなかったので栽培環境を整えていきたい。
・ 栽培は、その日の天候で作業が左右されるので、指導計画通りに進まず、時間がオーバーしてしまい、他の授業内容に響いてしまった。
・ 土壌栽培については、平日は水やりなど良いが、休み中の手入れなどを考えなければならない。
・ 今回、このように興味・関心が高まったので、この経験を生かせるように指導計画の見直しを図り、3年次にも5時間ほど作物育成に当ててみたいと考える。
(3) 第8回千葉県中学生ものづくり教育フェア 11月12日
一昨年中止となった「長生郡市ロボコン大会」は、今年度も選択技術科が実施されない学校が増え、参加校が確保できないため、実施が見送られた。
千葉県中学生ものづくり教育フェアロボットコンテストでは、昨年度の課題が継続となったこともあり、似たような機構のロボットが多い中で、テーマに即した工夫が見られたロボットがあったことは喜ばしいことである。県大会では、改良すべき課題を発見でき、生徒同士でいろいろなアイディアを出し合っている場面も見受けられた。冨士見中学校はこの大会で1,2位を独占し、関東大会に出場した。
(4) 作品展 (平成24年1月12日〜2月14日 茂原市立美術館)
作品展は約1ヵ月にわたって行われ、小学校の家庭科の作品も数多く出展されている。
作品展の性質上、技術分野では「技術とものづくり」の領域の作品がほとんどである。傾向として木材を使った作品が多く、「本立て・CD入れ」「小物入れ(箱物)」が主流となっている。また、教師の得意とする領域が感じられ、「力を入れているな」と思われる作品が見受けられた。家庭分野では、「幼児の遊び道具」「ハーフパンツ」が多く出展されている。
いずれの分野も奇抜さをねらわず、オーソドックスなものばかりであるが、基本的な技術がきちんと施されているかが審査のポイントとなっている。また、この作品展を通して、教師間の情報交換と活発な意見交換がなされた。
4. 成果と課題
(1) 成果
毎年行われる研究集会で、新しい教材・教具が発表される。教師自身がどんな題材を扱うか悩んでいるとき、発表を見て大変参考になる。活発な意見交換で悩みが解消される場合が多い。しばらくは前述の研究主題が続くと思われるが、このような機会を大切にしていきたい。
(2) 課題
@ 新たな教材・教具の開発には設備面の充実が重要である。各学校で工夫しているが、今ある工作機械等の保守・整備をもう一度励行すべきである。
生徒の実態をよく分析し、生活経験を調査して題材を考案することが肝要である。
これからの家庭科では、「学校で行ってみて、おいしかったからまた作ってみたい。」「それを家庭に持ち帰ってやってみたい。」など、実感のできる授業の工夫が大切である。ものを作ることから得る喜びを感じられる授業を展開することが大切である。