3、研究の実践  

(1)指導計画の工夫と検討

新学習指導要領の主旨は、大きくとらえると「生きる力の育成」と考えられる。

技術・家庭科での、「生きる力の育成」を実践するための方策の基礎は、「いつ、どこでどんな題材を使って、どのような学習方法で実践するのか」が最も大切と思われる。

そこで、小・中・ 高校の関連を図り中学校生活3年間を見通した指導計画、及び問題解決能力の育成を図るためにも、生徒自身が自ら進んで学習できる場を位置づけた指導計画が望まれる。

この指導計画は、

@ 問題解決的な学習を多く取り組めるように、指導目標・学習内容との関連から、どのような学習問題が設定できるか想定し、指導計画の中に位置づけた。

A 学習時間の減少の中にあっても、実践的・体験的な学習をより多く取り組むことができるように、配慮したこと。

B 生徒一人一人が自らの学習を自ら構成できるような素材を広く設定したこと。

(2)学習過程の工夫と検討

問題解決能力を育成するために、次のような学習過程で実践を試みた。

(a)課題の発見

生活を営む上で生じる問題(生活課題)や、自らの学習の中で生じる問題などを見つけ出すこと。

「一題材の中」で「一時間の学習の中」で、個々の生徒が見つけ出す課題は、さまざまであるが、 学習の導入部分での参考作品・見本・標本などの資料や掲示物などによる情報の提供、教師の支援 などをできるだけ多く取り入れた。

(b)情報の収集

課題や問題に対して様々な角度から考え、必要な情報を収集すること。

インタ−ネットなどの情報網や、地域の訪問などを通しての資料集めを積極的におこなった。自らの学習を設定するためには、生徒自身が教室・学校内にとらわれずに、地域にと活動の場を広げていった。


(c)解決方法についての比較検討

収集した情報がその課題や問題に対して有効であるのか。作品製作にあたっては、細部にわたって調べ、構想図などに表現するために検討すること。

また、調理実習などを行う場合は、いくつかの献立を立て、栄養・嗜好・価格・調理時間などの点から各自の分担について解決方法を比較検討する。

情報の交換・話合い活動の活性化など、生徒同士での場合や、一人一人の生徒の情報の取捨選択が活発に行えるように教師の支援・援助を多く取り入れるなどとした。


(d)意志決定

どの方法が適当かの意志決定をする。


各自の問題や課題を解決するには、インタ−ネットなどの情報網や、地域の訪問など様々な情報を通しての資料集めを積極的に行った。

それらの中から、自分が本当に必要な情報や資料を使って、どの方法で実践・実習することがよいのかを決定し、計画を立て実行(実践)する。

そのためには、話し合い活動・友人の励まし・教師の支援・援助も大きな支えとなった。


(e)計画

意志決定にしたがって、計画を立てる。

一人一人の計画を立てること、グル−プの計画を立てることなどがある。

授業時間の中で実践できるのか、学習方法学習内容ともに考慮した計画を立てる。

(f)実践・実行

一人一人の計画にしたがったり、グル−プの計画にしたがって実践・実行する。

(g)反省・評価


実践・実行した結果について、自己評価と相互評価を行う。

計画を立て実行(実践)したことが、目的に合致していただろうか?課題解決になっただろうか。自らに問うと共に相互に評価し合うこと。

学習の方法、情報収集の方法など学習の取り組み方についての自己評価を行うと同時に、相互評 価を行うこと。

及び、各自の課題解決に結びついたかの学習内容についての反省・評価も合わせて行うこととした。

(h)活用・応用・新たな課題の発見

実行(実践)したことが、生活の中のどんな場面で・どんな時に・どのように生かすことができるか。

また、どんな場面で応用できるだろうか。

さらに実行(実践)しているときや、その他の場面で新たに疑問に思ったり、不思議に思ったりすること。

すなわち新たな課題や問題が発見でできるのではないだろうか。すなわち (a)の課題の発見に戻ることとなる。


(3) 資料等の工夫

問題解決能力を育てる手立ての一つとして、学習カ−ド等が必要であると考えた。

課題や問題を発見する場面では、生徒自身が気づき問題意識を持つことが大切だが、一人では、発見できない時やとまどっているときは教師の支援・援助や友人の支えなどが必要になってくる。

また、情報の収集段階では、どの場面で・どんな情報を得ることができるかが最も大きな役割を持っている。

一宮中学校では、各普通教室にはもちろん、特別教室(被服室・調理室・技術室・図書室・保健室など)にも各々1〜8台のコンピュ−タが設置されており、好きなときに必要な情報がインターネットを通じて取り出すことができるようになっている。

したがって、食生活に関する情報としては、食品の調理法・利用のしかたなどは、コンピュータを使って情報を収集できる。

また、栄養に関することや、献立に関することは、「平成6年度関東甲信越技術・家庭科研究大会、千葉大会の食物領域分科会」で作成開発したソフトの「ヘルシーチェック」にソフトウェアの会社が協力修正してくれた市販のソフトが普通教室でも被服室・調理室でもいつでも自由に使用することができる。

さらに、技術・家庭科の学習で得た様々な資料や情報収集したことは、総合学習の時間の中でも生かすことができる。逆に総合学習の時間で学んだことや資料などの情報収集したものを技術・ 家庭科の学習時間で活用することができるように考慮した。

収集した資料や情報は、生徒たちのアイデアを生かし相互評価へとつながるように掲示物にしたり、ノートに保管することによって自己評価の資料になったり相互評価の資料となった。