「技術・家庭科の実践」の内容
(1)研究テーマ
実践的、体験的な活動を通して、生徒が自主的に課題に取り組む授業の工夫
(2)テーマ設定の理由
技術・家庭科では、よりよい生活を目指して、主体的に課題解決したり、学びあったりする活動を通して、各分野で、以下の目標を掲げ、達成するべく努力をしている。技術分野では、科学技術や情報化の進展などを考慮し、加工、生産などのものづくり及び情報活用の技術を生活という範囲でとらえ、それらにかかわる基礎的な知識と技術を習得することによって、技術を適切に理解し活用する能力と、工夫・創造して課題を解決する実践的な態度を育成することを目標に研究を進めている。家庭分野では、生活の自立を図ることに重点を置き、衣食住に関する基礎的な知識と技術の習得とともに、家庭生活の意義や家族の在り方を考え、豊かな生活を目指して、自分なりの課題を持って、生活をよりよくしようとする能力と実践的な態度を育てることを目標に日々研鑽につとめている。
このような生徒の育成のためには、毎日の生活の中から課題を見つけだし、その課題と自分とのかかわりについて認識を深めながら、その解決に向け、他と交流しながらも、自分で解決していく力を養わせることが大切と考え、研究テーマを上記の様に設定した。
(3)研究のねらい
研究テーマと情報機器活用との関連
技術分野では、内容の「B
情報とコンピュータ」が情報機器活用そのものであるから、他教科に先駆けて、コンピュータの基本的な構成や、機能及び操作を履修させるべきと考えている。また、生活や産業の中での情報手段の果たしている役割についても的確に指導し、適性が維持されコンピュータが使用されるよう、つまり、肖像権や、著作権の保護、他人の文書への勝手な割り込みなど、マナーについても指導していく必要性があると判断している。授業そのものが、直接コンピュータを操作する展開なので、初歩的な操作について、指導すれば(基礎基本を押さえる)、その後は生徒自らが、工夫したり、発展させたりして、主体的に活動することができると考えている。
家庭分野では、各内容の中で、CDーROMを用いて、興味づけ、学習効率を上げる、疑似体験をして実際の体験学習の準備に充てるなど、コンピュータを学習するというより、コンピュータを活用して、授業を活性化しているという用い方が主である。基本操作程度で、ソフトが自由に使いこなせるので、有効にコンピュータを活用することができる。14年度より時数の削減もあるので、内容はそのままで、時間が短縮できるという点で、とても役立っている。しかしながら、研究テーマは、あくまで実践的、体験的な学習活動であるから、実体験をなるべく多く取り入れた形で、指導計画を立てている。また、コンピュータだけでなく、ビデオ映像を取り入れて、学習したり、拡大映像機で手もと、指先を拡大して画面に映し、縫製技術や、調理技術の習得に効果を上げている。
このように技術分野では、情報機器活用そのものが、実践的、体験的学習活動であり、家庭分野では、体験的学習の準備や、授業効率を上げ、実践的学習活動の時間を増やすことをねらいとして研究を進めている。
(4)授業実践例 (→指導案)
@ 本時のねらい
・ バランスのとれた一食分の献立を考えることができ、用いる食品をその栄養的特質から、
6つの食品に分類することができる。 (関・工・技・知)
・ 献立に用いる食品をPCソフトを活用して、適切に選択、購入することができる。(関・技)
A 授業における機器利用のポイント
コンピュータを活用することで、生徒自らが、たくさんの情報の中から自分が必要とする情報を判断し、選ぶことができる。従来よく展開した栄養黒板などを活用して指導する授業内容が、このソフトを活用すると、スムースに、迅速に、個々に応じて対応できる。加えて買い物ソフトで、その献立に必要な食材を購入し、それぞれの食品の特徴を調べることができる。慣れない買い物の時間短縮にも役立つ。また、加工食品など添加物が多く含まれている食品について、実物がなくても、またそのパッケージを切り取って学校へもってこなくてもパソコンを通して確認することができる。さらに、一斉送信で、問題点を共有化したり、仲間のよい点を紹介することができる。その上、映像画面を通して、よりわかりやすく、楽しい授業が展開でき、生徒同士の情報も交換できる。授業の効率化を図るためのソフト活用に過ぎないが、時間数が短縮された分実習の時間を増やすなど他にも活用できるので、本ソフトを用いた指導計画を立てている。
B 準備
使用機器
パソコン 教師、生徒各1台
拡大映像機、TV
使用ソフト 開隆堂 「栄養博士」
開隆堂 「買い物ソフト」
フロッピーディスク
個人データ記録用
C展開例
学 習 活 動 | 指導上の工夫と教師の支援 | 時配 | 評 価 項 目 | |
導 入 |
・ソフト使用上の注意再確認 ・今日活用する項目の連絡 (ソフト@ー食卓編) (ソフトAー自由に買い物) |
・扱い方をよく理解できていな い生徒を支援する。 |
5分 |
|
展 開 |
・食品の栄養的な組み合わせ、主菜、 副菜、汁物の調和を考えながら、 一食分の献立を考えさせる。(朝、 昼、夕食のいずれか) ・自分で考えた献立は、6つの食品 群の食品がすべてはいっているか どうか確かめる。 ・足りない食品群がある場合は、献 立の変更、追加を考える。 @ 料理本から料理の選択 A 食品から料理の選択 ・TV画面で、プリントアウトし た、献立を提示し、一斉送信で、 ソフトAの活用方法を示す。 |
・条件として、すべての料理で はなくてもよいが、実習で調 理できる料理を組み合わせる よう伝える。 予想される支援 1.ソフトの活用の仕方がわからな い。 2.一食分の献立をしっかりとたて られない。 3.栄養的な組み合わせを考えてい ない。 4.自分が調理できるかどうか判断 していない。 ・テーブルの料理に使われてい る食品を食品群引き出しに移 動するようにする。 ・食品の分類が正しくできない と効果音がでて、その食品が 戻るので、引き出しに収まる までやり直すことを伝える。 @は、食卓の料理の本から料 理を変更する方法 Aは、台所の6つの食品群引 き出しの中で、不足している 食品の引き出しから食品、次 いで料理を選び、入れかえ、 または、追加する方法。 ・ソフトAを開けない生徒がい る場合は支援する。 ・売り場にない食品は抜かして もよいことを指示。 |
35 分 |
・献立を作成する中で、 条件と手順がわかり工 夫できるか。 (関・工・知) ・食品を栄養的特質によ って食品群に分けるこ とができるか。 (技・知) ・用途に応じて、食品を 適切に購入、選択でき るか。 (関・技) |
ま と め |
次時の確認 ・それぞれが考えた献立をもとに、 調理計画を立てる。 ・時間があれば、食品売り場に行っ て、食品の値段を見てくるよう連 絡。 |
・一人一人実習はできないので、 班の中で、実習可能な献立を 採用し、調理計画を立てるよ う指示。 ・フロッピィディスクと献立用 紙は、次時に提出することを 連絡。 |
10 分 |
(3)評価
・ バランスのとれた一食分の献立を考えることができ、用いる食品をその栄養的特質から6つ
の食品群に分類することができたか。
(関・工・技・知)
・ 献立に用いる食品をPCソフトを活用して、適切に選択、購入することができたか。
(関・技)
D 成果
・ 食品のその栄養的特質を従来より迅速に覚えることができ、繰り返し学習できるため知識の定着 率が高まった。
・ バランスのとれた献立を立てることができるので、実習で作るメニューのバランスもよくなった。
・ 食品の品質や、原材料、目安の値段など、事前に学習できるので、実際に買い物へ行くときの準 備学習をすることができた。
・ コンピュータの画像を通して学習できるので、楽しみながら、自分のペースにあわせて学習する ことができた。
・ 一斉送信で、問題点を共有化したり、仲間のよい点を紹介することができた。
・ 生徒自らが、たくさんの情報の中から自分が必要とする情報を判断し、選ぶことができる。
(5)成果と課題
成果
コンピュータ教育の研究指定を受ける以前は、教師サイドが、コンピュータ操作の未熟を否めない事実があり、それを一掃するべく場が与えられ、研究を重ねることができたのは幸運であった。そしてこの2年間にコンピュータ操作の向上はもとより、コンピュータ室の使用頻度が飛躍的に増え、指導計画の中にコンピュータを活用した授業が明確に位置づけられたのが教師サイドの最大の成果と考える。
コンピュータなどの教育機器を教科の授業に取り入れることにより、従来のような教師指導型の説明的、一方通行的な授業になりがちであった場面をコンピュータ操作をすることにより、画面を通して試行錯誤させるような作業的、発見的な学習活動に転換することができた。加えて、技術分野では、情報機器活用そのものが実践的、体験的学習活動であり、家庭分野では、コンピュータを活用することにより、授業効率を上げたり、疑似体験をして、体験学習の準備をしたり、時間短縮できた分作業を増やすなどかなりの成果を上げることができた。
当初は教師もそうであったが、単にコンピュータに関心があっただけとかコンピュータ室を使用さえすれば、画期的な授業になるととらえがちであったが、何回か授業を重ねたり、教師も研修を積み指導技術の向上を図ったので、だんだんと生徒の意識もかわり、「調べたい」「知りたい」「理解したい」といった生徒主体の学習に変容してきた。加えてコンピュータの機能や利点を生かし、有効に活用することによって、研究テーマ達成に大きな支援になることもわかった。
課題
・ 生徒のコンピュータへの興味・関心をより教科への興味・関心にむすびつけていくためには、教 材のねらいとコンピュータの手だてを吟味し、より主体的な学習活動を取り入れていく必要があ る。
・ 特に家庭分野では、コンピュータ活用の効果は、ソフトウエァの質と量及び施設・設備によって 大きく左右される。その購入や更新をさらに検討していく必要がある。例えば、家庭科室に班で 1台コンピュータがあると、コンピュータ室が使えない場合でも、ほぼ同じ指導計画で授業が展 開できるなど利点がある。
・ 各教科の授業で、生徒がコンピュータの基本的な活動で、支障のでないように、現在3年次に行 われている情報基礎を1年次から履修できるようカリキュラムの編成を行う必要がある。
・ 教師のコンピュータ・リテラシーをさらに高めるために、今後も、基本操作はもとより、より実 践的な活用方法について、研修を充実させる必要がある。
・ コンピュータ室を活用した場合の評価について、技術科以外で、操作の評価はどうするのか検討 する必要がある。また、それらの授業の中で、評価については、今後、クローズアップして、検 討、研修する必要がある。